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「健やかな暮らし」を実現する新たなアイディア創出へ。令和7年度ワーキンググループDAY3

  • 執筆者の写真: Smart City Nagano Smart City Nagano
    Smart City Nagano Smart City Nagano
  • 10月7日
  • 読了時間: 6分

令和7年度NASCワーキンググループでは、「Nagano Fusion Innovation Lab(通称NFIL)」と称し、「健やかな暮らし」の実現を目指す新たなアイディア創出に取り組んでいます。デジタルや新技術を活用し、長野で自分らしく健康に暮らし続けるためのアイディアを検討します。


共創の実践者による講義<インプット>


オープンイノベーションを通じた未来共創の実践者として、株式会社資生堂のブランド価値開発研究マネージャーである中西裕子氏による講義が行われました。この講義は、プログラム参加者が多様な関係者を巻き込みながら事業アイディアを具体化していく上で、重要なヒントを得ることを目的としています。


資生堂は「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」というミッションを掲げ、事業活動を行っています。特に近年では、美と健康の価値観が変化し、見た目だけでなく内面や生き方が重視されるようになったこと、そしてコロナ禍を経てその傾向が加速したことを捉えています。同社は、肌・身体・心の繋がりに着目した研究を長年続けており、データサイエンスの活用によってその関係性の解明が加速しました。


その研究成果を社会実装する拠点として、横浜に「Shiseido Beauty Park(シセイドウビューテイーパーク))」という研究所を設立しました。特にfibonaの活動から生まれた「スキンアクセサリー」は、当初の想定を超えてダンサーやアイドルのファン、さらには映画のメイクアップにも活用されるなど、多様な需要を掘り起こしました。


fibona(フィボナ):

研究所発のブランドとして、スタートアップや生活者とのコラボレーションを通じて、スピーディーに小ロットで製品を試作・販売するオープンイノベーション活動です。これにより、既存の枠組みでは2年近くかかっていた製品開発をアジャイルに進め、市場のニーズを迅速に捉えることが可能になりました。


これらの小さな成功体験が研究員の自信につながり、さらなる挑戦を促す好循環を生み出しています。中西氏は、「やってみないことには何も始まらない」という姿勢の重要性を強調し、たとえ失敗してもそこから学びがあれば良いというマインドセットが、新しい価値創造には不可欠であると語りました。


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対談パネル&参加者ディスカッション

講義後には、中西氏と参加者による活発なディスカッションが行われました。参加者からは、事業推進における組織内の課題、具体的な商品開発、そして多様な顧客セグメントへのアプローチなど、多岐にわたる質問が寄せられました。


組織内での新規事業推進の難しさについて

参加者から「プロジェクトを進める上で組織の中で大変だったことは何か」という質問がありました。中西氏は、「既存事業を手堅く回している部門と新しいことをやろうとする部門との間には、しばしばコンフリクトが生じる」と述べ、これは「混ぜるな危険」と分離する考え方もあるが、自身はあえて協力を仰ぐ道を選んできたと語りました。


その際、双方にとって「会社のために重要である」という共通認識のもとで対話することや、既存事業部門の協力なしには製品化が不可能であることを伝え、仲間として巻き込んでいくことで、少しずつ組織全体の考え方が変わってきたと述べました。


また、基礎研究の研究員が社会実装に関わることで、自分たちの研究が社会に役立つことを実感し、大きな自信を得る機会にもなっていると付け加えました。


多様な顧客セグメントへのアプローチに関して

男性向け(メンズ)市場やシニア向け市場についての質問も出ました。

中西氏は、男性市場について、ブランドによって「メンズ」と明記した方が響く層と、ジェンダーニュートラルな世界観を好む層が存在するため、それぞれのターゲットに合わせてブランドのポジショニングを繊細に設計する必要があると説明しました。


シニア向け市場についても、日本が最初に迎える高齢化社会において非常に重要なセグメントであると述べ、単なる製品提供だけでなく、例えば化粧を通じて外出を促し健康寿命を延ばす「化粧療法」のような、生活を豊かにするためのソフト面での貢献を模索していると語りました。


地方との連携の可能性

資生堂としてはポップアップストアの開設やワークショップの共同開催など、研究所の「0→1」を生み出す機能を活用した協業は非常に親和性が高いと述べました。


中西氏は、「大きな会社だから接点が少ないのではないかというバイアスがあるかもしれないが、まだどこにも正解はないので、垣根なく一緒にトライアンドエラーをしながら学びあっていきたい」と述べ、今回のプログラムでの出会いを大切にしたいと締めくくりました。



事業アイディア精緻化<ワークショップ>


DAY3の午後は、各チームが事業アイディアを具体的なビジネスモデルへと落とし込むためのワークショップが行われました。これまでアイディアの発散やコンセプトの言語化に取り組んできましたが、このフェーズからは、アイディアが実際に機能し、持続可能な事業となりうるかを検証する「現実的な」段階に入ります。


そのための主要なツールとして「ビジネスモデルキャンバス」が導入されました。


ビジネスモデルキャンバスは、以下の9つの要素で事業の全体像を可視化するフレームワークです。

  1. 提供価値(VP): 顧客にどのような価値を提供し、課題を解決するのか。

  2. 顧客セグメント(CS): 価値を提供する最も重要な顧客は誰か。

  3. チャネル(CH): 顧客にどのようにアプローチし、価値を届けるか。

  4. 顧客との関係(CR): 顧客とどのような関係を築くか。

  5. 収益の流れ(RS): 顧客が何に対して、どのように対価を支払うか。

  6. キーリソース(KR): 価値提供に必要な人材、資金、ノウハウなど。

  7. キーアクティビティ(KA): 価値提供に必要な主要な活動。

  8. キーパートナー(KP): 事業を支えるパートナーやサプライヤー。

  9. コスト構造(CS): 事業運営にかかる最も重要なコストは何か。


参加者は、このキャンバスを用いて自チームのアイディアを整理し、ビジネスの仕組みを構築していきました。


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さらに、アイディアの解像度を高めるため、次回のDAY4までの宿題として、顧客候補者へのヒアリング(インタビュー)が課されました。これは、事業アイディアが本当にユーザーに求められているのかを検証するための重要なプロセスです。

参加者は、事業に関わる直接的・間接的なステークホルダーをリストアップし、誰に何を聞くべきかをチームで議論しました。ヒアリングを通じて顧客のインサイトを得ることで、アイディアはさらに磨かれていきます。


プログラムは現在、多くのチームが「これで良いのか」と悩む「混乱期」にあるとされていますが、このプロセスを乗り越えることで一気に加速していくと期待されています。

最終的なアウトプットは、「長野で自分らしく健康に暮らし続けるために、デジタルや新技術を活用した事業共創プロジェクト」であり、「健やか」というテーマに立ち返ることが改めて強調されました。

 
 
 

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